1984年 | 食品学会の発表 日本食品衛生学会第51回学術講演会 東京都立衛生研究所 諸角 聖、和宇慶朝昭、上原真一、一言 広 東京都市場衛生検査所 鈴木輝康、星野健雄 【タイトル】 本邦食品の糸状菌汚染に関する研究 柑橘類果皮中の抗真菌物質について 【目的】 市場における青果物の真菌による被害は、ほ場の衛生管理の向上、栽培法、貯蔵・輸送技術の改善などにより徐々に減少しつつある。各種柑橘類においても低温管理および保存料の使用により長期にわたる流通が可能となった。しかし輸送に長時間を要し、国産柑橘類と販売時期をずらす必要から長期間冷蔵保存後出荷されるグレープフルーツ、オレンジなどの輸入柑橘類では、輸入時および流通時に真菌の発生する頻度が高く、多量の廃棄を余儀なくされる例も少なくない。また、これらの原因菌はいずれも従来より知られている柑橘類固有の腐敗真菌であるが、これらの真菌の柑橘類への感染のメカニズムについては現在なお不明な点が多い。そこで、今回演者らは柑橘類の真菌汚染機序の解明ならびに真菌汚染防除手段を開発するための基礎試料を得る目的で、まず柑橘類成分中の抗真菌物質の単離を試みた。 【結果】 アルベト組織(果皮の白色部分)をできるだけ除去後粉砕したGFおよび甘夏果皮から各種有機溶媒を用いて抗菌成分の抽出を試みた。 <途中 省略> 活性はシトラールおよびシトロネロールに認められた。しかし、供試した果皮およびクロロフォルム抽出画分中におけるこれらの物質の含有量は極めて微量であったことから、これ以外の抗菌物質の存在が推察された。 <途中 省略> この結果から本物質は分子量218であることが判明した。さらにC15H22Oと推定された。柑橘類成分中の分子量218のテルペン化合物としてnootkatone(ヌートカトン)がすでに報告されている為これと精製標品と比較したところ、両物質は全く同一のスペクトラムパターンを示した。この結果から、GFおよび甘夏成分中の主要抗菌物質はnootkatoneと同定した。 <途中 省略> 甘夏、伊予柑、八朔など8種の果皮中に存在した。また、各菌株に対する抗菌活性を測定したところ、本物質は500μg/mLの濃度でP. digitatum(ペニシリュム)およびF. Oxysporum(フザリウム) の発育をそれぞれ90%以上阻害し、P. italicum (アオカビ)およびG. candidum(ゲオトリクム属カンジダ)の増殖を完全に阻止した。<以下省略> |